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今回は、メルマガ・ステップメールASPの「オートビズ」を運営されているビズクリエイトの経営者、渡辺哲也氏にインタビューを行いました。インタビューは全5回でお送りいたします。

第1回の記事はこちらから、第2回の記事はこちらから、お読みいただけます。

 

事業が拡大していく中で発生した大トラブル

オートビズに専念することを決意してから、大きな事件や問題はありましたか?

2005年ごろ、オートビズ事業が軌道に乗り始めた時期のことです。

急にサーバーがトラブって、警告が出たんです。調べてみると、あるユーザーさんのアカウントでトラブルが発生していました。約14,000人のお客さん宛てに、同じメールが何回も送られている。きっとメールが届いた人の携帯は鳴りっぱなしですよ。

当然、不本意に”送り主”となってしまったユーザーさんからも「どうなってるんだ!」と連絡が入ります。大急ぎで止めたんですが、その時には既に、結構な数の人へ誤送信されていました。

 

我々の想定外の使い方をしていらっしゃったことがトラブルの原因でした。その使い方がプログラムの不具合を誘発してしまった。

想定外とはいえ、そこを防げるような対策が講じられていなかったんです。

 

ユーザーである会社さんのコールセンターは、お客様からのクレームでパンク状態。

日頃、弊社とやり取りをしている担当者さんに電話をすると「しばらくかけてこないでください」とのお答え。

「なんでですか?」と聞いたら「今、ビズクリエイトという名前を聞いたらみんな発狂します」「何かあったらこちらから連絡するんで。」と言われました。

 

「大変なことになった…」と思いましたよ。

僕はもう、どうやってそれを償おうか、必死で考えを巡らせました。でも、謝って済む問題でもなかった。

 

どのくらいの規模の問題だったのか、詳しく教えてもらえますか?

相手の会社はテレビコマーシャルもやっているくらい、相当お金をかけて集客をしてるんですよ。

うちのサービスを利用したステップメールも一生懸命運用していただいていて、お客様からの信頼を勝ち得ていらっしゃった。

それが、たった1回のバグによって、お客さんとの関係が崩れてしまった。結構な数が離脱していったと思うんです。

その会社がやっとの想いで獲得したお客様なのに、トラブルのせいで関係を崩してしまった。当然、相手の社長から「すぐに来い」と連絡がきました。

ところが、ちょうど9月で台風の時期で飛行機も飛ばず、1週間くらい伺うことができなかったんです。

その期間は生きた心地がしなかったですね。まだお金もないから、償いようもないし。

本当に「生命保険っていくらおりるのかな」とか真剣に考えました。人って追い詰められると、こんなことを考えるんだなと、自分でも怖かった。

自殺まで覚悟した自分に、かけられた言葉は

そうこうするうちに台風が収まり、やっと飛行機が飛ぶようになりました。朝一の便で福岡に飛んで、到着すぐにひたすら土下座ですよ。

社長もまいっちゃっている様子でした。「コールセンターはパンクしているし、うちの社員も精神的にやられちゃってて、損害額がもう計算できないですよ。計算するのが恐ろしいです。それぐらいのものなんです」と。

ただただ、申し訳無さでいっぱいでした。

 

そんな中、社長は「ただね、おたくはまだ小さい会社だというじゃないか」「担当からも聞いているが、うちのために色々よくしてくれている」と話し始めたんです。

当時のオートビズは3人くらいでやっている会社でした。僕がサポートの電話は全部取っていたから、担当の人とは仲が良かったんです。一生懸命、親身になってサポートしていました。

 

続けて社長は「御社は、まだ創業からそこまでたってないとも聞いています。これから損害額を計算して、弁護士を入れて損害弁償…という流れにしなければいけないんだけれども、払えますか?」と聞いてきた。

「できる限りやらせていただきます」と答えました。

ところが、「無理でしょ。お金あるんですか?なければ払えないじゃないですか」「なんとかします」と押し問答です。

「なんとかならないでしょ。うちだって、お金のないところを訴えるということもできないし、そんなに若い会社を潰すわけには行かないんだ。こちらもよくしてもらっているし、そのサービスがあるからこそリピーター獲得を自動化できていて、助かっているんです。ここであなたの会社がつぶれてなくなったというのでは困ってしまう。何よりお金がないところから取れないじゃないか」って。

 

胸がいっぱいで言葉も出ないですよ。

かといって、何もしないわけにもいかない。

その会社は、複数のネットショップを出していたんですよね。そのうちの一つを任せるとおっしゃる。「売上を上げてほしい。できますか?」と。

「できます。必死にやります。そこの売り上げを上げても、損害はカバーできないかもしれないけど、オートビズの方でもたくさん施策を考えて、御社のお客さんを増やしますから!」

もう、それしか言えないですよね。

そしたら「償いだけでは辛いでしょう。それでよくなるとは思えないよ。だから売り上げの20%をやることにするよ」って言い出すんです。

「それで、頑張って会社をちゃんとして、いいサービスを作ってくれ」とおっしゃるんです。

償いきれないほどの損害を与えて、それを許してもらえただけでもありがたいのに、チャンスまで与えていただいて、そのうちの売上の20%まで。

あまりのことに理解するまでに時間がかかりましたが、ありがたすぎて泣けてきましたよ。

それをしばらくやって、上向きになってきたところで、事業の方針が変わって閉めるとなるまではお付き合いが続きました。社長も交代されたようです。

だから、僕は償いきれていない。

あの時のことは、絶対忘れてはいけない、と思っています。

 

これは、そのときの2005年の9月の航空券です。

なんだか捨てられなくて、未だにとってあります。たまにこれを見ると、あのときのことが蘇ってきます。

ちょっとした気の緩みで、こういう問題が起きてしまう。問題があったときに僕らがどう向き合うか。ちゃんと向き合うためには、日頃から丁寧にサポートすることが大事だと思っています。

僕らの日頃のサポートが悪かったら、「取れるだけとってやろう」という感じだったと思いますよ。冗談じゃなく。

このときは、担当の方と築いていた関係性、そして社長の器に救ってもらったんです。

この社長みたいにでっかい経営者になりたいと、心に決めました。

また、そのときの経験を通じて、一通のメールの重みや、メールを通して築いたお客様との関係性というものの価値は、本当にすごいんだなと強く思ったんです。

関係性って大事ですね。

仕事だから、とかじゃなくて「お客さんのために、僕らが何をできるのか」というのを真剣に考えてやる。そうすると、こちらの姿勢が伝わるのだと思います。

 

2人の経営者と出会っていなければ今の自分はなかった

会社設立時に僕にチャンスを与え続けてくれた社長。

システムトラブルを起こしても仕事をくれた社長。

僕もそういった経営者になれるか、いつも考えます。

 

特に、前者の社長には、本当にかわいがっていただきました。

ただ、残念なことに社長さん本人は、数年前に亡くなってしまいました。

急死でした。午前中、健康診断に行って、「どこも悪くないですね」という診断を受けて帰って来たら、ぱたっと倒れて、そのまま…。

 

その社長のおかげで、僕はたくさんチャンスを与えていただいて、いろんなチャレンジができた。

時代が後からついてくる、と言っていた。それを信じて今でもやっている。本当に時代が追いついて来たのに、道半ばで…。

それが僕にとってはショッキングな出来事でした。悲しかった。一緒にその時代が追いついたところをみたかったんです。

多くの人にチャンスを与えられる経営者に

僕は社長の遺志を引き継いでやっていかなきゃいけない。いまだにその会社さんにはコンサルをしています。かれこれ15年くらい。そのおかげで、いまでは相当な売り上げを上げられるようになりました。

 
その社長の遺志を継ぐ。多くの人に、チャンスを与えて、チャレンジしてもらいたい。

ミスしまくって、みんなに迷惑ばかりなので、私はもう辞めたい!という社員がいたとしても「僕は、お前が諦めない限り、いくらでもチャンスを与えるつもりでいるよ」と。それは必ず言っています。

僕自身、チャンスを与えまくられて今があるから。信じてくれる存在の大きさは誰よりも知っているつもりです。

他の会社の方に対してもそうしたいと思っています。

いま弊社で使っている顧客管理システムを作ったときも、依頼した外注先が開発途中でつぶれちゃって。

作業の進捗に沿ってそれなりにお金を支払っていたので普通なら回収にかかりますよね。

 

でも、ふっと2人の社長が思い出されたんですね。今こそ、これを発揮させるべき時なんじゃないか。

だから、「いま出来上がっているところだけで納品して下さい。お金は、払った分はもういいです」と言いました。その人には再起して欲しかったんです。チャンスを与えたかった。

 

「個人でもいいから引き続きやってもらいたい」と考えていました。でも、「できません」ということで。

先方は「出来上がってないので、お金を返さなきゃいけない」と言ってくれました。「いいよ。そこで。あとはうちで引き取ってやるから」ということになりました。

 

その二人の社長だったらそうするだろうな、というのがあったからできたことだろうなと思います。

常に何かするときは、「あの二人の社長だったら…」ということは、考えます。

いろんな人にいろんなチャンスを与えられるようにしていきたいです。

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