人の心を揺さぶる共感文章、書いてみませんか〈共感文章コンサルタント・中尾ミカ氏〉
共感文章コンサルタントに聞く「伝わる文章」きほんの”き”〈中尾ミカ氏・第1回〉
公開日:2017年12月31日

中尾さんは「共感文章」のコンサルティングをしていらっしゃるとお伺いしました。具体的にはどういったことをされているんですか?
「書けない」「どういう風に書いたらいいか分からない」という方に、書き方をお教えしたりするセミナーや講演、コンサルティングをさせていただいています。
他にも、文章作成をまるっと請け負うサービスも行っています。
人の心が動く時、そこには共感がある
「共感文章」と言うコンセプトにたどり着くまでに、中尾さんはどういった経験をされてきたのですか?
過去のご遍歴を教えてください
私が「文章の仕事に携わろう」と思ったきっかけは、高校1年の時に、本屋であるアーティストのライブのレポートを読んだことです。私が実際に足を運んだライブのレポートでした。
それを読んだとき「あ、あのライブの記事だ!」「じゃあ私があのとき感じた気持ちを、こんな風に届けられるんだ!」って感じた事を覚えています。
そして、「これを作る人になりたい!」と思ったのが、この道に進んだきっかけですね。
その後は、進学を期に上京して、編集者になりました。
そこで共感や感動につながる文章の書き方を、仕事を通じて鍛えてもらって。だから、人にどう伝わるか、を考えるのは当たり前のことでした。
それから、自分で独立して会社を立ち上げました。「文章に関わりながら私らしく仕事がしたい」「私が提供したいのは人の心に伝わって、人の心を動かす文章だ!」ってことで、何かしっくりくる言葉がないかなーって考えて生まれたのが「共感文章」というコンセプト。
何か文章を読んだ時に「あー、それ―っ!」って感じたことってありません?
あの体験を生み出したいと思ったので、「共感」という言葉と「文章」を組み合わせて「共感文章」となりました。
文章を書くことを通じて何かを伝えるのが好き、共感や感動を共有することに重きがある、と。
私「自分の文章を書くこと」自体はそんなに好きな訳ではないんです。もちろんきちんと書くことはできるのですが(笑)
「書いて終わりではない。伝わって初めて価値がある。」と思っているので、「書ききったぜ!」ではなく「伝わった!」ってときに達成感があります。
基本的に文章は、スマホだったりPCだったり雑誌だったり、直接顔を見ることのできない方に向けて書くものです。ですから、伝わったかどうかを知るのはとてもむずかしいですよね。でも、たまにリアクションが返ってくることがあります。例えば、読者の方からのメールやハガキ、周囲のスタッフからの感想などです。
私は読んでくれる方を自分に乗り移らせて、その方の心が動くよう意識して文章を書くようにしています。そうして書いた文章への反響があると「乗せたかった気持ちが伝わったんだな」と、たまらなく嬉しい気持ちになるんです。そこまで行って初めて、私の中で文章を作る喜びが感じられるんですよね。
相手に伝わったときの嬉しさは、なんともいえないですよね!
「誰に、何を伝えるか」にこだわる
伝わる文章を書く、その考え方やノウハウを他の方に理解してもらうために、どんなことを教えているんですか?
どんな文章であっても、これだけは絶対に軸ブレさせてはいけないと、繰り返しお伝えしていることがあります。
それは「誰に、何を伝えるか」なんです。これは核です!
当たり前じゃん、とお思いになったかもしれません。でも、びっくりするくらい、みんな自分が伝えたいことを勝手に書いちゃうんですよ。
すぐ自己中になるんです。そしてそういう文章は全く伝わらない。
文章の書き方をお伝えする相手には、まずはここをきちんと理解してもらいます。
なるほど。確かに、僕にも経験がありますね(苦)
誰に何を伝えたいかがブレブレのまま文章を書いてしまう原因って、なんなんでしょう?
やっぱりお客さんの方を向いていないからですよ。
自分が「何かしたい」とか「何を売りたい」とかそういう自分目線の考え方になってしまっている。読み手目線の考え方とか欲求とかに考えが及んでいないことが多いですね。
「読み手はこう思っている“だろう”」という想像なんですよね。「本当にそういうお声があったんですか?」とかを聞いてみると、「いや…」と答えが返ってくることも。
想像は、いってしまえばただの妄想です。やっぱりズレが生まれてしまいます。私もそうなってしまうので、これは自戒を込めてなのですが(笑)
読んでほしいと思う相手に直接「どんなことが知りたいですか」とか「何を考えてますか」とか聞いてしまうのが一番早いですよ。
ぶっちゃけ直接聞くのがいちばんいいんだと思います(笑)それが一番ずれがないですから!
そもそも、なんでわざわざ妄想で終わらせるの!?という(笑)
そんな妄想してても、読者の心は落とせないよ、って。
読んでほしい人に直接聞くのが一番!
最近、中尾さんのメルマガで見かけたんですが、「私のサービスにダメ出しをしてくれる人を探しています」というテーマで勉強会を開いたと伺いました!
そうなんですよ!
妄想で文章を書いてしまったりサービスを考えてしまうのって、私にとっても他人事ではなく、つい最近でも起きちゃって。油断すると誰でもそうなるんですよね。
一年半ほど前に、文章作成の教材ツールを作ったんですけれども、ウキウキで内容てんこ盛りに作ってしまったんですね。もちろん、私の中では明確に「この社長に提案すれば気に入ってもらえるはず!」という方がいらっしゃったんですが。
そうして出来上がったその教材とランディングページを勢いこんで紹介したところ、
「中尾さん確かにうちに必要なもののひとつだとは思う……でも一番じゃないわ、これ」「前に一度トライしたときに、うまくいかなかったんだ」というお返事が。
そこで「まじか…どうする…」と思いながら、念のために用意していたFacebook広告の共感型キャッチコピーに関するB案を提案したところ「中尾さん、うちに今一番必要なのはこれです!」と3ヶ月の契約が決まったんですよね。
ちなみに、そのB案を準備できたのは、直前に提案先の社員さんに最近のお悩みを聞いていたからなんです。
今、その瞬間に必要なもの、って実際に聞かなきゃ分からないですよね。
その通りなんです!
ああ、「今、本当に必要なもの」が何なのかを聞かないといけないんだなぁ、と大反省。
きちんと相手のお話を聞いて、それに合わせてサービスを用意することの大事さに改めて気づかされました。
妄想の中で相手の考えを作ってはダメだなあ、と。
それからですね。どんなことであっても、ターゲット層が決まった段階で「一度きちんと話を聞こう」「想像で書き進めないようにしよう」と反省して、そういう企画を考えたんです。
読み手をプロデューサーとして巻き込んでいく
書き方を教える立場の人が「教えてください」と顧客に言うのにはすごく勇気がいりますよね。
「ブランドに傷がつく」とか「信用が落ちちゃうんじゃないか」と思いがちだと思います。
おっしゃる通り両方あると思うんですよね。先生然としていないと不安に思う部分もあるじゃないですか。
ただ、私がこういった試みをやるのは、何度かお会いしたお客様なんです。私のfacebookやメルマガの読者層も分かってるみなさんでしたから、そういう取り組みを理解してくださいます。
そして、自分たちの欲しいものを一緒に作っていきたいと、仰ってくれるんですよ。
みんなが悶々として持っているものを公開して共有し合いながら、それをサービスとしてまとめてみよう、ということが根っこにあるんです。
「参加したら教材を買わなきゃいけないんじゃないか」と思われて、一人も集まらないこととかを危惧されませんでしたか?
誰もこなかったら「一人も来ませんでした!」って言おうと思ってました。
結果として大反響だったので、非常に多くの学びを得ることができたように思います。
実際に参加してもらうような催しを企画する時は、単なる執筆トレーニングにならないようにします。その場で話し合ってもらったり、聞く時間があったり、とにかく体験型体感型を意識しています。
そのうえで、私がみなさんに一番聞きたかったのは、「書きづらいところや、筆の止まるところがないか? それはどういったところか? 」という点でした。
そういった方のためのトレーニング講座を作ろうとしていたので、とにかくわかりづらいところや書きづらいところを探し出す目的だったんですよね。
ところが、実際には「分かりづらいところはなかった」という風に言っていただき、それ以上に「こういう風にしてくれるともっと嬉しい」という意見がわんさか出てきました。
商品のブラッシュアップにつながるご意見をたくさんいただいたんです。だから、参加者の皆さんには、「いわゆるプロデューサーとして、これからもご意見をいただくことがあります」という風にお伝えしています。
だって私が届けたい皆さんにサービスの開発を一緒にしていただけるって最高じゃないですか。
確かにそうですね(笑)ある意味、反則技っぽいような(笑)
結果的に、こちらのノウハウは全てお見せすることになりますし、「フィードバックをしていただくかどうかはご自由に」という風にもお伝えしています。だから、提供するサービスとしてのバリューは変わらない。
そのうえで、「皆様、プロデューサーとして貴重なご意見をありがとうございました! 今回のプログラムが完成した暁には、皆様にだけ特別に無料でご提供いたします」とお伝えしたんです。
そうしたら「おおお!!」と歓声があがりました。
そのダメ出し会自体には、参加者の本気度を基準にするため少額ながら参加費を頂いてたんです。その上、月末で募集期間もめちゃくちゃ短かったのにもかかわらず、多くの方に参加いただけて。
お客さんとの距離がとても近くてAKBみたいですね、何よりサービスの発足時点からご意見をくれた方っていうのは神じゃないですか。
そうですね、私の中では「神5」です。その時は5人の方にプロデュースをしていただいたので。
そうやって開発した「共感文章トレーニング講座」は、オンライン講座として30日のトレーニングを繰り返すかたちで展開する予定です。
またそれ以外にも、体験会として“知らない人に文章を書いてフィードバックをもらう”という会を開催しています。
参加者と私自身から全員にきちんとしたフィードバックを返せるように少人数でのイベントを開いています。
びっくりするのが、集まった皆さんは文章のプロではないのに、フィードバックはめちゃくちゃうまいということです。
他人の文章については、指摘するべきポイントがよく分かるんですよね!
他人の文章の課題やポイントが見えたときに、その視点が戻ってきて初めて気付けるんです。「あっ!!」って。
その体験がめちゃくちゃ大きくて。
一人で文章を書いていて自分の世界に閉じこもってしまうのではなく、人と意見を交換しながら文章を書いていく。これを積み重ねるのが、「誰に何を伝えるのか」という意識を育む上で非常に重要なんですよね。
共感文章の目的は、「人の心を動かすこと」です。だから、実際に目の前の人に文章を伝えて、心を動かす、共感してもらう。こういう瞬間を実感していただく場を設けていきたいと思っています。
【インタビュー協力:中尾ミカ】
株式会社キャリアスタイル・代表取締役(http://careerstyle.jp/)。顧客の心に響く【共感文章作成】と、「書ける人」を育てる【共感文章コンサルティング】を提供し、独自の共感文章メソッド書けない悩みを解決する。
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